vol.1
no.5 日光戦国原

 

フィンランドの作曲家シベリウスを知っていますか?
この音楽家の作風の一つの方向は、フィンランドの民族感情を盛り上げる壮大雄渾な曲。

シベリウスの作品のもう一つの方向は、国土の8割が森林と湖沼が占めるという風土をイメージさせる抑制静謐な曲です。

第四交響曲はこの傾向の作品。この音楽を聴いていると、北方の森と湖の国の風景が眼前に拡がってくるような印象を持ちます。

 

ハ・ニ・嬰ヘ・ホと進む出だしの部分はチェロやファゴットの低音が神秘的で森の中にさまよい込んだような気分にさせます。二楽章はオーボエが森の中の小動物のように動き回り、第三楽章ではフルート、終楽章はグロッケシュピールが印象的な役割を果たしそして弦楽の凍てつくようなエンディング。

一方この曲にはどこか東洋的な香りがします。なぜか・・・ その昔中央アジアのフン族が西進しこの地方に定着し、フィンランドの民族音楽に東洋の音階の名残りがあるためといわれています。

クロスカントリースキーで歩く日光の雪景色を見ていると、そのむこうに見えるのはシベリウスの音楽の醸し出す風景イメージ。