Vol.1
No.6 彼岸の街角
 カラートーンチャートというものがあります。色の三要素といえば色相・彩度・明度で、これらの組合せは無限にある訳ですが、それを12種類に分類したものです。原色に近いVivid、淡い色調のPale、地味なGrayish、濃いめのDeepなど。違う色相でも同じトーンなら馴染みがよいという訳です。
  この観点で見ると、それぞれの国や地方にもおのずと気候風土の醸し出す独自のトーンがあるということになります。北欧はピュアでクリヤなペールトーン、中国は華やかでこってりとしたストロングトーンといった具合。
 日本は? からりと晴れた秋の空のクリヤな色調、夏の日射しのもと煮えたぎるような強い色調など様々な調子の色が季節と共に移り変わっていきますが、湿潤で曇天も多い我が風土は基本的にはグレイッシュなトーンの国だと言えます。 くすんだ調子の板壁、灰色の街路、鈍い光の曇り空。これらは皆日本のカラートーンですね。しかしこうした調子の色は今の日本ではむしろ珍しい部類になっているようです。