小柿の里の集合住宅


中庭

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1927(昭和 2)年 小田急線が開通し成城学園前駅も開業しました。
そのころこの地に移り住んだ民俗学者柳田國男は成城についてこんな文章を残しています。

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「この私たちの新住宅地は(中略)あの頃はまだ砧村と呼ばれて居た。砧村の特色は麦畠の多いことで、雲雀(ひばり)は二階の窓の外に鳴いて居たが、それも一年ごとに少なくなる。(中略)何か新しい面貌を備えるようにしなければ、こうして集まって住んでいる甲斐もないと、最初に考え出したのが小柿の里であった。」  (柳田國男 「美しき村」 『豆の葉と太陽』昭和15年所収 )


『豆の葉と太陽』表紙

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「小柿の里」構想に沿って、柳田國男は柿の苗木を200本ほど取り寄せて村人に配り植えてもらったという。
その後も杏や梅をこの村の特徴ある風景にしようとやはりそれらの苗木を取り寄せて村人に「押し売り」して、その後の様子を散歩の振りをして見てまわったといいます。土壌や気候との相性もあって思うようには村の景観になりきれなかったようですが、成城の生垣の多い町並みは柳田國男のような先人の活動も寄与しているものと思われます。

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今回の敷地には昭和10年代初頭に建てられた木造の住宅が建っていました。道路の拡張のため取り壊して建替える事になったものですが、敷地には柿の木があり、時代からみてひょっとすると柳田國男の配った柿の木であったかも知れません。


新築後の現在も敷地内に残る柿の木

 
旧宅の細部、照明カバーは新築建物に移設

 
昭和の雰囲気の残る旧宅、欄間は新築建物に移設

既存の住宅を解体する前に、近所の東宝撮影所から、
戦前の住宅のこまごまとしたものを映画の小道具として購入したいとの申し出があり、
いくつかの日常生活の小間物を持って行っていただいたそうです。
ちょっとした小物が映像のリアリティを作り出すのでそのような話があるのも納得できますね。

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1 外部

せっ器質タイル貼りの外壁
あきのこない安定感のある外観

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西側外観

 

 
落ち着いたイメージのアプローチ

 

 

 


タイルと打放のコントラストで構成した南側外観

左奥にExam.25の建物が見えます

  
タイルの詳細
スクラッチ風のせっ器質タイルと骨材入りのモルタルで少し広めの目地として自然な風合いを出しました


コンクリート打放とせっ器質タイルの組合せ


白熱灯色の灯具で暖かな雰囲気の夕景

 

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2 共用部

中庭を中心に落ち着いた空間構成の共用部

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風除室・エントランスホールに接する中庭
不織布の上に桜川砂利を敷きこみ


風除室
ベージュの壁天井は帆立貝を素材にした塗り仕上げでタイルの重厚な感じを和らげています
またメールボックスも大理石モザイクとし柔らかな雰囲気を出しています

 
中庭の夜景と雪景


エントランスドア越に中庭を見る

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共用廊下階段の夜景
LED照明が壁などの素材の質感を浮き立たせています

階段は幅員芯々1500(有効約1250ミリ)一段の寸法が踏面(奥行)280ミリ蹴上(高さ)170ミリと
ストレスなく昇り降りできる寸法になっています

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3 外構植栽

常緑・落葉を織り交ぜて四季折々の緑や花が楽しめるように計画しました
既存樹もそのままの位置で残したり再植樹したりしています

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ヒマラヤヤマボウシ                シマトネリコ

 
ヒペリカムヒデコート               サザンカ(既存樹)

 
ドウダンツツジ(既存樹)                ツバキ(既存樹)

 
アセビ                     セイヨウシャクナゲ(既存樹)

 
サルスベリ(既存樹)           キンモクセイ(既存樹)

 
カンチク                      ヒイラギナンテン

 
サクラ(アマノガワ)                   ナナカマド

 
フッキソウ                    イタヤカエデ


南側植栽
シマトネリコ、ヒマラヤヤマボウシ、ヒメシャラ、エゴノキ、ヒメリンゴ
下草にヒラギナンテン

 
南側植栽    西側植栽


西側植栽
ヒマラヤヤマボウシ、ツバキ、ヤマボウシ
下草にヒペリカムヒデコート

 
アプローチ脇のナナカマド     角地のサクラ(アマノガワ)


中庭は坪庭的なしつらいにしてあります
アセビ、シダ、カンチク、コグマザサ
不織布の上に桜川砂利敷き
手前左にイタヤカエデ株立ち

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4 賃貸住宅

木を基調に自然な風合いの仕上げにしてあります

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賃貸の居室内部も腰壁・天井に木を使用し寛いだ雰囲気を演出しています

 
メゾネットの上階は頂部で2.85mの天井高とゆとりを感じさせます


メゾネット上階からの見下ろし

 

 階段の詳細

 
賃貸内廊下                          洗面所

                
      洗濯機置場の窓                玄関脇収納(小)      玄関脇収納(大)

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[賃貸の設備関係]

・玄関収納はW1200(400+800)とW300を設置、多用途に対応可能

・洗濯機置場はドラム式を考慮して洗濯パンは間口740を使用し、空気のこもりがちなワンルームのプランの中で洗濯機置場にサッシを設置し換気に配慮

・厨房セット:間口1650ミリ及び2100ミリと大きめにしシャワー水栓設置

・インターネットはBフレッツ対応、ひかり電話も選択可、TVはUHF・VHF・110度CS受信、地上波アナログ・デジタルどちらも可

・セキュリティについてはオートロック、玄関ドアは2ロック、必要なサッシには90ミルのシートをはさみこんだ防犯合せガラスのペアガラスを使用したほか、各所に防犯カメラを設置

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5 住宅

道路から玄関室内までバリアフリー
防音仕様の部屋を設置

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旧宅の灯具カバー    →   新築の玄関上に移設

  
旧宅和室の欄間      →    新築の間仕切に移設

 


和室のしつらいでベッドの利用ができるようフローリング床にしてあります

 
玄関からフラットで移動可能なバリアフリー床と便利な引戸

 


趣味の音楽鑑賞のため防音等の措置を施した居間

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防音等のディテール

 
吸音パネル(梁型のような下がり天井は給気ダクト)

 
梁型状の下がり天井は吸音層と照明設置スペースで遮音層はこの上部
壁は音場設計上吸音パネル設置の壁があります

 
防音ドア部分詳細 白いシール部分で絶縁しています

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工事中のようす

 
換気扇は遮音ダクトを介して外部につながっています
壁は普通の間仕切壁に遮音用のボードを貼った上で絶縁層を挟んで
隣接室と縁を切って内側にもう一つ壁を建てこみます

 
独立壁下地作業中

 
吸音パネル加工中            完成時の音響測定     

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雨水の利用

 

雨水排水の縦樋を分岐してこのタンクに貯め植栽の水遣りなどに使用できるようになっています

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Exam.28
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