緩衝空間で日常をリセットする
様々なストレスの中で仕事をし生活をしている現代人が住むところには、
緊張状態を解きほぐす場所が必要ではないかと考えました。
そこでこの建物ではエントランスホールを緩衝地帯として、外での様々な活動の余韻をそこで遮断し、
リセットした状態で自室での生活にはいっていけるよう考えました。
ピラネージの版画
ローマにアベンティーノの丘という小高い眺望のいい丘があります。ここに建つ修道院の扉の鍵穴はサン・ピエトロ寺院のドームがよく見えるということで有名です。この観光名所の鍵穴のある建物を設計したのがピラネージという18世紀の建築家ですが、今ではピラネージは建築家よりも版画家として有名です。彼は18世紀の人でありながら古代ローマ(紀元1世紀頃の)を題材として銅版画を作りました。作品は写生ではない分だけ想像力豊かで非日常的な感覚が楽しめます。
その銅版画作品は、非日常的なスケール感や素材自体のもつ存在感を表現していて、日常的な感覚をリセットしてくれます。
この建物では、そこを通ることで日常感覚を一旦オフにする空間としてエントランスホールを作ろうと考えました。
エントランスホール計画のポイント
(1) 非日常的なスケール感
3層吹き抜けのホールと最上階の天窓から降りてくる光で非日常的なスケール感を演出する
(2) 素材の持つ力
人工的な材料で囲まれて生活している現代に、素焼きのテラコッタとステンドグラスという手作りの素材の持つ力を感じさせる
(3) 静謐な音環境
細かな凹凸のある材料の仕上げが音を吸収し、硬質な材料でつくられた空間なのにもかかわらず静謐な音環境をつくりだす
居住者の通る階段ホール
眠り目地のブラストブロックが現代の石積みとしての存在感をもち、
3層吹き抜けの上部からトップライトの光が落ちてくる心地よい静かさの空間です
顔料を混ぜたブラストブロックはとても柔らかな風合いの材料です
眠り目地という積み方のブロックが石積みのようなソリッドな質感と
落着いた雰囲気をかもし出しています
このブロックの素材感は
装飾をそぎ落とした
素朴なロマネスクの修道院建築に通じるものがあります
スペインのロマネスク教会堂の石積の壁
(フロミスタ・サンマルタン教会)
フランスのロマネスク修道院の壁
(ル・トロネ修道院)
階段室の壁はせっ器質タイルとなっています
目線の先にある素焼きの穴あきテラコッタブロックが開口部のスクリーンになっています
素材としてはブロックのほかに、テラコッタ、せっ器質タイルという焼き物
コンクリート、石、スチールを使用しています
エントランス部分の夜景
建て主の子息製作のステンドグラスと
焼き物のテラコッタがホールに彩りを添えています
ステンドグラスのモチーフは、1層目は「都市」2層目が「村」3層目が「空」
3層分の吹抜の最上部
天窓からおりてくる光でとても明るい
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