長期修繕計画
長期修繕計画の必要性
建物は完成した時点から物理的機能的な性能の低下が始まるのはやむ得ないところです。したがって性能の低下を抑えるために、そのマンションンの特性に合わせた長期修繕計画が必要となってきます。
日本の分譲マンションでは販売戦略上管理費を低く設定する傾向が根強く、そのうちの修繕積立金も必然的に少ない金額になってしまい、適切な時期に必要な修繕工事ができず一時しのぎの工事で問題を先送りにし建物の老朽化を早める結果になるというケースが見られます。
そのようなことのないようにするためには、長期修繕計画は調査診断の時点で見直しを行い、その時の状況にあわせた計画にしておく必要があります。
長期修繕計画の内容
(1) 修繕計画内容
計画内容は予測される修繕工事の内容で、マンションの部位ごとの「修繕工事の項目」「修繕工事の周期」「修繕工事の仕様」「推定工事費」が主な内容になります。
一般的に計画は新築時は30年、見直し時は25年以上の計画期間を設定します。
(2) 資金計画
長期修繕計画のもう一つの柱は資金計画です。上記の計画内容で設定した長期修繕計画の期間内の各年毎の推定工事費を算出し、これと修繕積立金の計画残高とを比較します。
計画に対して残高が不足する場合は積立金額が変わらなければ大規模修繕時に不足を生じ、一時金の徴収もしくは借入が必要になるため、修繕積立金の改定を検討します。
ライフサイクルコストと予防医学
(1) ライフサイクルコスト(LCC)
その建物に要した企画・設計・建設などのイニシャルコストと一般管理・修繕・更新などのランニングコストの全体の合計をライフサイクルコスト(LCC)といいます。このうちイニシャルコストの占める比率は、その建物が何年の寿命を持つかにもよりますが、概ね20%前後と言われています。
(2) 修繕における予防医学
人の健康を考えたとき重大な病気が自覚症状で現れた時には治療に要する時間も費用も大きくなり、場合によっては手遅れということもありえます。それに対して定期健診で健康状態をモニターしていれば疾患が見つかっても軽微な影響にとどめることができます。これが予防医学の考え方です。
建物においても、定期的に建物の状況をチェックし長期的な視野に立った修繕計画を修正しながら建物のメンテナンスをしていけば、建物の健康を保つことが最小限の出費で維持できます。これが長期修繕計画を定期調査にもとづいて見直していく根拠となっています。