特殊建築物定期調査報告
一定の規模と用途の建物は、竣工後も適法に維持されているかどうかを、定期的に調査し所轄の行政庁に報告する義務があることが、建築基準法で定められています。
定期調査の規定
1. 定期調査が義務付けられている特殊建築物等
一定の規模の特殊建築物や政令で定める事務所などは定期的に(一般的に3年に一回)建物の調査を実施してその結果を特定行政庁に報告することが義務付けられています。なお、主要な自治体の場合は対象建築物を独自に定めています。[建築基準法12条1項]
(東京都の場合の対象建築物はこちら)
(神奈川県の場合の対象建築物はこちら)
(千葉県の場合の対象建築物はこちら)
(埼玉県の場合の対象建築物はこちら)
(横浜市の場合の対象建築物はこちら)
(千葉市の場合の対象建築物はこちら)
なお、特殊建築物等の建物以外の建物についても、竣工後、適法に維持するように努めなければならないとされています[建築基準法第8条] (建築基準法条文はこちら)
2. 維持保全計画
特殊建築物等の所有者等は建物の維持保全計画を作成しなければならないと規定されています。この維持保全計画に基づいて定期的に調査して現状の把握をするのが上記の定期報告制度というわけです。[建築基準法8条2項] (建築基準法条文はこちら)
この維持保全計画で作成すべき内容も法で定められています。[建設省告示昭和60年第606号]
(建設省告示第606号の内容はこちら)
この建築基準法上の維持保全計画は、マンションの管理組合が取り組んでいる長期修繕計画のようなものです。
3. 定期調査についての法改正
新宿歌舞伎町の雑居ビル火災(2001年)東京都中央区の事務所ビル斜壁タイル落下事故(2005年)東京都港区の共同住宅内エレベーターでの死亡事故(2006年)などを踏まえて定期報告制度を見直すことになったもので、主な変更点は下記の通りです。(2008年[平成20年]4月改正)
(国交省:改正についてはこちら)
(国交省:告示(平成20年282号)内容はこちら)
(i) 外壁タイル等:築10年超は全面打診調査(赤外線調査で代替可能)
(ii) 建築設備・防火設備:定期点検未実施の場合作動状況調査が必要
(iii) 吹付アスベスト:状況調査で飛散防止対策なき場合劣化状況の調査が必要
(iv) なお、前年の平成19年に、定期調査報告を怠るか虚偽の報告をした場合の罰金の上限が「50万円以下」から「100万以下」に引き上げられました。
(国交省のパンフレットはこちら)
定期調査の内容
1. 敷地・地盤
地盤沈下等による不陸傾斜などがないか確認します
地盤の沈下で躯体に比べ周囲の土間が沈下している例
地中梁部以外のアスファルト面が沈下している例
地盤の沈下のため土間タイルが傾斜している例
2. 建物の外部
外壁躯体の劣化・損傷などがないか確認します
コンクリート躯体のひび割れの例
ALC版のひび割れの例
タイルのひび割れの例
タイル浮きの例(赤外線画像)
エフロレッセンスの例
鉄筋の爆裂の例
3. 屋上および屋根
防水に不具合がないか確認します
屋上j防水に植物が繁茂している例
ドレインの老朽化と汚泥堆積の例
防水保護層が剥離している例
4. 建物の内部
防火区画の状況耐火被覆の状況などを確認します
EV区画の遮煙スクリーンの例
EV区画遮煙機能表示シールの例
区画貫通部の処理例
排煙窓付属金物不具合の例
排煙窓が物品で塞がれている例
避難階段が物品で塞がれている例
耐火被覆の例
非常用照明器具の発錆と点灯障害の例