涼を求めて浜松町の船宿から屋形船にのりました。道路より低いところに降りていくのは少し不安な気分になるものですが、静かな水面の両側には護岸、そして高速道路の橋脚が立ち、その向うにはビル。それぞれの要素がチグハグで超現実的なこの風景は、身近なところにありながら今まで気がつかなかった日常空間の裂け目とでもいうべき場所でした。 |
川とか運河というものが日々の生活と結びついたものとして整備され馴染んでいくとパリや蘇州のような美しい都市になっていくのでしょう。ところが、東京のこの場所においては残念ながらそうした配慮や洗練はなく、様々な要素がそのときどきの必要に応じてばらばらにつくられ、遭遇したという風情ですね。
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バブル景気の頃に流行となった「ウォーターフロント」の再開発。宴のあとというのは少し荒んだ寂しさがつきまとうものですが、夜の海から見る海岸の風景は結構いいものです。「夜」の黒は七難隠す、とでもいうのでしょうか。広重の「名所江戸百景」においても「深川洲崎十万坪」など夜の黒を背景にしたものに名作が多いように思います。ところで一寸先も見えない20世紀末、夜の暗闇の先を見通す目が欲しい。
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