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2001/8/19 磨崖仏と古代ローマ遺跡 2001/8/26 不況時の建築家ピラネージ 2001/9/2 想像上のトーキョー建築

7月の東京の平均気温は28度でジャカルタのそれを上回ったようです。猛暑と選挙と靖国騒動で肉体的にも気分的にも疲れましたね。房総半島の南端鋸山にある日本寺百尺観音は岩山を彫り込んだ磨崖仏。戦後出来たものですが30mの高さの切通しは迫力があります。築後三十数年を経て風化もし古さびた風合いが古代の遺跡を思わせ、ローマ遺跡を描いた18世紀の建築家のピラネージの銅版画を連想します。

ローマに行った旅行者はアベンティーノの丘に建つ修道院の扉の鍵穴からサン・ピエトロ寺院のドームをのぞいたことがあるかも知れません。この観光名所の鍵穴のある建物を設計したのがピラネージです。バロックの建築ブーム後のローマは極度の不況で建築設計の仕事は殆どなかった。そこで、建築家ピラネージは銅版画で生計を立てることにした。不況が希代の銅版画家を生んだ訳です。

不況のために創作意欲を実施作品で実現できなかったピラネージ。彼は古代ローマ遺跡を版画に描く時に現実を飛び越えて想像上の「18世紀の古代ローマ建築」を創り出し、大量に印刷出来る版画の特質を生かして広い範囲で影響を与え続けて来ました。今またバブル後の大不況の真最中。未来に語り継がれる想像上のトーキョー建築は生まれるのでしょうか。